研究概要 |
細胞の増殖と分化はホルモンや成長因子などの科学的要因のほかに電磁場などの物理的要因によっても制御されている. 事実, 電気刺激により骨, 軟骨組織の成長や修復が促進さる事が示唆さている. その作用機序は不明であり特に細胞レベルでの変化は明らかでない. そこで我々はうさぎ助軟骨より分離した初代成長軟骨培養細胞を振動磁場で2日間刺激した後, 副甲状腺ホルモンを添加するとCAMPレベルの上昇, オルニチン脱炭酸酵素の誘導能, 及びグリコザミノグリカン合成がいれも有意に亢進することを見出した. すなわち振動磁場刺激が軟骨培養細胞のPTHに対する感受性を亢進する結果として軟骨培養細胞の分化機能が促進することが示唆された. しかし増殖能に対する影響は認められなかった. そこで, 増殖と分化機能をさらに検討するために, 可変型パルス発生装置を試作した. まず, 電気刺激の最適条件を決定するために腎臓由来のNRK細胞を用いて, ^3H-thymdineの取り込み率でパルス電場の細胞増殖に対する影響を検討した. その結果, sparseな状態のNRK細胞に0.3%FCS添加のみで電場刺激を行う未刺激群に対して約30%の取り込みの亢進が認められた. FCS濃度を5%, 及び10%, にすると増殖速度は上昇するものの電場による刺激効果の有意差は認められなかった. EGF存在下では濃度比例的に増殖速度が上昇するが電場刺激の効果はやや抑制的に作用した. 以上の結果, NRK細胞が高い合成能力を発揮し得る状態では, 増殖因子の作用が強く現れ電気仕儀の効果が発現し難いものと思われる. 今後は軟骨培養細胞に対する電場刺激の影響について検討を加えたい. 尚, これらの結果についての一部は, Bochm.Biophys.Acta.931:94-100(1987)に発表し, 次いで, 昭和63年1月16日に, 咀嚼システムの基礎的研究の班会議に発表した. 研究成果報告書として発表される予定である.
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