研究概要 |
1. ヒト唾液中の高ヒスチジン含有ペプチンの分離と精製 ラット肥満細胞からのヒスタミン遊離活性を指標にして, ヒト混合唾液からヒスチジンを多量に含むペプチド類をDEAE-Sepharose,CM-Cellulose, 及びBio:Gelカラムを用いて分離した. この分画を更に高速液体クロマト法(HPLC)により精製した. 現在までに分子量の異る4種類のペプチドを得た. 各々のペプチドは10-5-10-6Mの範囲で, それぞれラット膜腔から分離した肥満細胞からヒスタミンを遊離した. またこれらはラット皮膚の血管透過性を著明に亢進した. この亢進は抗ヒスタミン剤のジフェンヒドラミンによって完全に阻止された. これらのペプチド類をSalivary histamine releasing peptides(SHRP-1-4)と命名した. 2. SHRPの一次構造の決定 SHRPsのうち比較的多量に得られたSHRP-2と4について, 自動Edman法及びカルボキシペプチダーゼ法によって, それらの一次構造の決定を試みた. その結果, SHRP-2はアミノ酸残基24個からなる塩基性のペプチドであり, そのN未満はAsp, C未満はTyrであった. 一次構造としてはAsp-Ser-His-Ala-Lys-Arg-His-His-Gly-Tyr-Lys-Arg-Lys-Phe-His-Gla-Lys-His-His-Ser-His-Arg-Gly-Tyrと推定された. またアミノ酸残基33のSHRP-4についても目下構造決定中であるが, このペプチドのN未満から24番目まではSHRP-2と全く同じ構造であることが分った. 他のSHRPsについても同様に検討中である. 以上の成績から考察すると, ヒト唾液中に存在するSHRPsは共通の前駆蛋白質から出発し, 分泌ないしは, 分泌の過程において小さな断片のペプチドに分解されることが強く示唆された.
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