研究概要 |
1)まず最初に, 基質特異性に関してはホスホチロシンに特異的なプロテェイン・ホスファターゼとして共に分離されるアルカリホスファターゼ(AlP)とアシドホスファターゼ(AcP)のマウス由来骨芽細胞MC3T3-E1での発現状態を詳細に調べた. (1)細胞内にAcP活性は継代培養後二週間で最大量を示し, その後減少して四週間後には殆ど発現していなかった. (2)AlPは培地中の血清濃度を下げるに従って細胞外への分泌が増加したが(継代培養三週間で最大値), 細胞内レベルは二週間後から増加し始めて四週間過ぎからは一定量に達した. 2)次に, チロシン残基のリン酸化にかかわる上皮細胞成長因子(EGF)のレセプターとAcP或はAlPとの関連を調べる目的で行われた実験では, EGFの添加された培地でのMC3T3-E1細胞の継代培養後二週間目のAcP活性は, コントロール(EGF無添加)に対して20〜30%増加していたが, 細胞内AlP活性は完全に消失していた. EGFレセプターの発現状態はただいま実験中です. 3) AcPおよびAlPのモノクロナール抗体の作製のために必要である大量のMC3T3-E1細胞を現在蓄積中である. 4) AcPのホスホアミノ酸に対する基質特異性の^<31>P NMRによる研究では, 次の様な新事実が発見された. (1)ホスホチロシン(P-Tyr), ホスホセリン(P-Ser)の単独系では, AcPはpH5及びpH7付近でもP-Tyrの方に遥かによく作用し, P-Seaの方はP-Tyrに較べて約6%位しか脱リン酸化されなかった. (2)P-TyrとP-Seaの両方を含む二基質系では, 上記両pHでP-Tyrだけが脱リン酸化されるという完全な基質特異性が観測された.
|