唾液分泌にCa^<2+>-phospholipid-dependent protein kinase(protein kinase C)が関与していることを昨年度明らかにした。本年度はその機構の解明を試みた。即ち、(1)protein kinase Cによってリン酸化を受ける基質蛋白質がラット唾液腺に存在することを確認した。本蛋白質は、SDS-PAGE法により耳下腺・顎下腺の両唾液腺共にMr.80Kに認められた。又ラット脳から得られた基質蛋白質と同一分子量を有することから、抗体法によって確認していないが同一蛋白であると推定された。これらの結果は、本実験系に細胞外からのprotein kinase C(脳から抽出精製)の添加により得られた。即ち、唾液腺内の本酵素レベルは、高比活性の^<32>pを使用したにも拘らず、^<32>p化蛋白質の確認に至らない程度のものであった。この事は合成基質を用いて得られたkinase活性レベルの値からも推定された。 (2)α_1アドレナリン受容体蛋白質同定の試み……phospholipidやdiacylglycerolは云わゆるsecond messengerとしてprotein kinase Cの活性化に寄与している。この事はprotein kinase Cの活性化にはphospholipid代謝を制御しているα_1-アドレナリン受容体の関与が考えられる。α_1-アドレナリン受容体蛋白質の構造については未だ不明でありその同定を行った。即ち、放射活性リガンド4-amino-6、7-dimethoxy-2-〔4-〔5-(4-azido-3〔^<125>I〕iodophenyl)-pentanyol〕-1-piperazinyl〕quinazolineを合成し、光cross-linkingにより受容体蛋白質の同定を行った。SDS-PAGEの結果、87K及び42Kに放射活性バンドを認めそのいずれかがラット唾液腺のα_1-アドレナリン受容体蛋白質と推定された。尚、Lefkowitz等は、ハムスターのα_1-受容体蛋白質についてC-DNAの構造から解析しアミノ酸515残基からなるpalypeptideであり、Mr.56Kと報告した。(Proc、Natl、Acad、Sci、USA 85、7159-7163(1988)。糖鎮を含むことからラットのそれについては、87Kが妥当と考えられた。
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