研究概要 |
骨代謝調節機構と高血圧との係わりについて, 副甲状腺機能の亢進ラット(カルシウム欠乏食にて維持したラット)および不全ラット(副甲状腺摘出ラット)を用いて検討した結果, カルシウム欠乏食で維持したラットにおいて著明な血圧の上昇を認めた. カルシウム欠乏食はラットに低カルシウム血症および副甲状腺機能の亢進を起こすが, 副甲状腺摘出ラットにおいては, 低カルシウム血症を起こすにもかかわらず, 血圧の上昇を認めなかった. この事より, この血圧の上昇が血中カルシウムの低下によるものではなく, 二次的に惹き起こされた副甲状腺機能の亢進により生じている可能性を示した. この血圧の上昇は可逆的であり, このラットの飼料中のCa量を正常にもどすことにより正常血圧に回復した. この高血圧は, アンジオテンシン1変換酵素の阻害薬であるカプトプリルにより抑制されず, レニンーアンジオテンシン系の関与は低いものと考えられた. 一方, カルシウムアンタゴニストであるニフェジピンおよび血管手滑筋に直接作用するヒドララジンは強力に血圧を降下させた. 血圧の上昇に伴い, カルシウム欠乏食維持ラットにおける血中カテコールアミン(ノルアドレナリン, アドレナリン)の増加および副腎におけるカテコールアミン合成酵素(チロシン水酸化酵素, ドパミンbeta-水酸化酵素)の増加を認め, 副甲状腺機能の亢進が副腎のカテコールアミンの遊離および合成を促進する事を示した. 一方, 副甲状腺摘出ラットにおいては, カテコールアミンおよび合成酵素の変動を認めなかった. 以上の知見より, カルシウム欠乏食により惹き起こされた血圧の上昇は, 副甲状腺機能の亢進により, 副腎におけるカテコールアミン代謝系が促進され, 血中のカテコールアミンの上昇により生じている可能性を示した.
|