研究概要 |
4週齢, 8週齢および1年齢のラットを用いて, それぞれの根尖性歯周炎の実験モデルを確立することを試みた. その結果, 8週齢ラットを用いての実験では, 髄腔開拡後7日目から歯髄は壊死しており, 10日〜14日目では多形核白血球の軽度の浸潤が観察された. 術後1.5日目〜2日目と10日〜14日目に破骨細胞の数および面積の増加のピークがあり, 単位面積あたりの酸フォスファターゼ陽性細胞数は破骨細胞の変化と同様の変化を示していた. エステラーゼ陽性細胞数は歯根膜腔の面積とともに増加傾向を示していたが, 単位面積あたりのエステラーゼ陽性細胞数はすべての症例で対照群とほぼ同様の値を示していた. 根尖周囲の骨髄腔および膿瘍中ではプロスタグランディン合成酵素保有細胞を認めた. 骨形成面は骨吸収面の変化とは逆に負の相関性を呈していた. 骨吸収から骨形成への逆転期では破骨細胞と骨面の間に極性を有した紡錘形の単核細胞が観察された. これらの細胞は酸フォスファターゼ陽性であり, 一部の細胞はアルカリフォスファターゼに陽性を示していた. 電顕的には骨芽細胞と同様の超微構造を有していることから前骨芽細胞と推測した. 4週齢および1年齢のラットを用いての実験では, 歯髄がvitalな状態では8週齢で観察されたような破骨細胞数の増加は認められなかったが, 歯髄が壊死し歯根膜中に多形核白血球の浸潤が観察されるようになると, 8週齢と同様の破骨細胞数の増加が認められた. 以上の結果より急性炎症と骨吸収は密接に関連しており, 骨吸収の発現にはプロスタグランディンが関与している可能性が示唆された. 現在, プロスタグランディン合成酵素の検索においてDABを発色剤として用いているため, 内因性のペロキシダーゼのより適確な抑制方法について検討中である. 今後, 本実験で確立した各週齢ラットの根尖性歯周炎の実験モデルを用いてインドメタシンの骨吸収抑制作用についての検索を行おうと考えている.
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