根尖病巣と歯周疾患はともに骨吸収を伴う病変であり、現在骨吸収を促進させる主要な因子としてインターロイキン1(IL-1)をはじめとする各種サイトカインが注目されている。しかし、病巣組織内における局在を観察した報告は見られないことから、炎症局所においてIL-1がどのような細胞によって産生されているのかを明らかにするため以下のような実験を行った。 根尖切除手術時に得られた人の根尖病巣内におけるIL-1の局在を観察することを目的として、PLP固定後ABC法によるパラフィン切片上での観察を行った。その結果、血管内皮細胞と炎症性細胞に陽性の所見が認められた。しかし、ペルオキシダーゼによる標識法では内因性ペルオキシダーゼによる阻止が不完全である可能性があるため、標識酵素としてアルカリホスファターゼを用いたところ陽性細胞は観察できなかった。 そこで4%パラホルムアルデヒドによる固定後OCTコンパウンドに包埋して凍結切片を作製し、マウス抗ヒトIL-1βモノクローナル抗体、FITC標識抗マウスIgM抗体の順に作用させ、螢光顕微鏡による観察を行ったところ浸潤細胞の一部では胞体内に陽性の所見が認められた。また同一切片に対して非特異的エステラーゼ染色を行ったところ反応陽性の細胞が認められており、病巣内のマクロファージがIL-1を産生している可能性が示唆された。 しかしながら、モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学においてはイムノブロッティングが唯一の特異的検定の手段であり、これまで得られた結果からは陽性所見を示した細胞がIL-1との反応によるものかは断定できない。現在サルモネラ由来のLPSにより実験的に誘発させた炎症巣より得られた組織及び抽出物に対して、組織化学とブロッティングを行う予定である。
|