研究概要 |
昭和62年度に確立したマウス骨髄細胞培養系を用いて、1α,25ー(OH)_2D_3の骨吸収作用機構を解明する目的で、これによる多核細胞形成への1α,25ー(OH)_2D_3ー26,23ーラクトンの影響について検討を行なった。 1.1α,25ー(OH)_2D_3の多核細胞形成におよぼす1α,25ー(OH)_2D_3ー26,23ーラクトンの影響 10^<-8>_M濃度の1α,25ー(OH)_2D_3によって形成される多核細胞の数は、10^<-7>_M濃度の23(S),25(S)ーおよび23(R),25(R)ー1α,25ー(OH)_2D_3ー26,23ーラクトンの同時添加によってその数を増加させた。しかしながら、10^<-7>_M濃度の1α,25ー(OH)_2D_3による多核細胞形成には影響しなかった。他方、10^<-8>および10^<-7>_M濃度の23(S),25(R)ーおよび23(R),25(S)ー1α,25ー(OH)_2D_3ー26,23ーラクトンを10^<-8>および10^<-7>_M濃度の1α,25ー(OH)_2D_3に添加すると多核細胞の数は著明に抑制された。 2.多核細胞形成へのビタミンD_3アナログおよびカルシトニンの組み合せ添加による影響 カルシトニンで一次培養(5日間)し、1α,25ー(OH)_2D_3で二次培養(7日間)した系では多核細胞形成が著明に抑制された。また、23(S),25(R)ーおよび23(R),25(S)ー1α,25ー(OH)_2D_3ー26,23ーラクトンにおいても同様の結果を得た。他方、1α,25ー(OH)_2D_3で一次培養し、カルシトニンあるいは23(S),25(R)ーおよび23(R),25(S)ー1α,25ー(OH)_2D_3ー26,23ーラクトンで二次培養した結果を比較すると、カルシトニンで一次培養した系の方がより強く多核細胞の形成を抑制した。 以上のことから、23(S),25(R)ーおよび23(R),25(S)ー1α,25ー(OH)_2D_3ー26,23ーラクトンは、1α,25ー(OH)_2D_3による多核細胞形成を阻害することによって1α,25ー(OH)_2D_3の骨吸収作用を抑制することが示唆された。すなわち、1α,25ー(OH)_2D_3は破骨細胞の前駆細胞に働き、その結果として多核の破骨細胞数が増加し、骨吸収が促進されると考えられる。
|