研究概要 |
根尖病巣の病態や病勢を調べる目的で、患歯の臨床所見と根管滲出液中の細胞成分の質的変動を比較検討した。さらに細胞成分の大半を占めた多形核白血球 (好中球) については、電子顕微鏡による形態観察、および白血球細胞機能のなかでMBT還元試験による殺菌能とFITC標識蛍光beadsを用いた貧食能の検索を行い、下記の結論を得た。 1.根管滲出液細胞の種類としては、全症例の平均で多形核白血球が97.7%と大半を占め、つぎにlymphocyte1.3%,macraphage1.0%の順であった。細胞成分の割合と患歯の臨床所見との間には、相関関係が認められない。 2.電顕的観察では、細菌を多数取り込んだphagocytic vacuoleや脱顆粒を示す多形核白血球が多く認められた。またphagocytic vacuoleを認めるが細菌をまったく取り込んでいない多形核白血球も観察された。 3.根管滲出液中の多形核白血球はその患者の抹消血中の多形核白血球と比較して、還元率が有意に低い値を示した。 4.根尖病巣を有する患者の抹消血中の多形核白血球の還元率と健常者のそれとの間に有意な差は認められなかった。 5.根管滲出液中の多形核白血球はその患者の抹消血中の多形核白血球と比較して、貧食率が有意に低い値を示した。 6.根管滲出液中の多形核白血球の貧食能と臨床的病型との関連性を検討した結果、有意な差は認められなかった。また、根尖病巣を有する患者の抹消血中の多形核白血球の貧食率と健常者との間に有意な差は認められなかった。
|