重合方式ならびに組成が異なる臼歯部用コンポジットレジンについて、口腔内環境を想定した吸水およびサーマルサイクルにより、それらの機械的特性がどのように影響されるかを検討し、下記のような結果を得た。 1) 光重合型コンポジットレジンの吸水量は経時的に増加し、水中浸漬4週間後には化学重合型コンポジットレジンのそれよりも高い値を示した。 2) 光重合型および化学重合型の両者とも、吸水ならびにサーマルストレスによってそれらの臨界破壊靱性は著しく影響され、劣化傾向が示された。 3) 両種コンポジットレジンのビッカース硬さは吸水およびサーマルストレスにより殆ど影響を受けなかった。 4) SEMによる試片の破断面の所見については、重合方式の相違による差が示されなかったが、水中浸漬時間が長い場合には破断面にフィラーの突出や脱落が多く観察された。 5) 吸水およびサーマルストレスは表面粗さに著明な影響を与えるが、光重合型コンポジットレジンにおける粗さの増加は、化学重合型におけるそれよりも少なかった。 6) 化学重合型下の圧縮試験時におけるアコーステック・エミッション (AE) 特性については、応力の増加に伴って順次少数のAE発生が見られ、破壊過程における亀裂の進展の潜伏期をうかがわせる母の広いステップを得経て脆性亀裂の成長による僅かな事象数の増加を繰り返し、比較的安定な亀裂の進展を示した。 7) 三点曲げ強さ試験時のAE特性については、負荷の比較的初期に共通して亀裂の進展が推測されるAE事象数の増加が示され、材料間に差みられるものの、類似の傾向を以て亀裂の成長、進展あるいは停止が繰り返され、最終破談に至っていた。
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