研究概要 |
62年度は, 根尖病巣を有する感染根管内優位菌の検索および, 優位菌の免疫生物学的意義を明らかにすることを目的として研究を行い以下の知見が得られた. まず, 40症例の根尖病巣を有する感染根管から細菌を分離, 固定した結果, 32症例から細菌が分離され, Bacteroides, Popt-ostreptococcus, Veillonellaが優位菌として高頻度に分離された. 菌種レベルでは, B, buccae B, oralis, V, parvulaなどのG(-)偏性嫌気性菌の分離頻度が高かった. 次に分離された根管内優位菌の菌体破砕上清を標品として免疫生物活性(ヒト単球遊走能, エレー1産生誘導能, マイトジェン作用, PBA作用)を調べた結果, ヒト単球遊走能ではB, buccaeの遊走刺激作用が高かった. さらに補体存在下では作用の増強が認められた. IL-1産生誘導能は, すべての供試菌に誘導能が認められ, 菌種間の差は殆ど認められなかった. マイトジェン作用は, すべての供試菌においてB cellマイトジェンを示したが, T cellマイトジェンは認められなかった. なお, B, buccae, B, oralis, B, pneurosintes, V, parvulaのB ce-llマイトジェン作用は, 他の供試菌に比べて高かった. PBA作用は, B, buccae, B, ora-lisに増加が示された. 次に最も高頻度で分離されたB, buccae菌体成分を分離, 精製し各画分の免疫生物活性を検討したところ, B cellマイトジェン作用, 単球遊走刺激作用は分子量88人タンパクに由来し, IL-1産生誘導能は, 38人タンパクならびにLPSに作用のあることが明らかになった. 以上のことから根管内から高頻度に分離されたG(-)偏生嫌気性菌は, 高い免疫生物活性を有し, 根尖部に集積した免疫担当細胞の機能を誘起することが示唆された. 63年度は, 根尖病巣の免疫病理学的検索を行い, 根管内細菌が免疫応答を介し病巣成立に関与していることを形態学的に証明する予定である.
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