研究概要 |
本研究は中心位, タッピング位, 咬頭嵌合位等の一般的な咬合位決定法における下顎位と, 頸反射を利用したEMGバイオフィードバック法による下顎位とを比較検討し, 頸反射とEMGバイオフィードバック法による下顎位の特徴を明確にすることである. そしてこれらの結果をもとに, 頸反射とEMGバイオフィードバック法による下顎位が臨床上の咬合位設定の基準となり得るかを検索することである. そこで, 正常有歯顎者と顎口腔機能異常者を被検者とし, 以下の実験を行った. 各々の被検者を用いて, MKG及びシリコーン印象材を用いてチェックバイト法による下顎位と, 通法による中心位, タッピング位, 筋肉位, マイオセントリック位及び本法による頸反射とEMGバイオフィードバック法の5種の方法について記録した. チェックバイト法による下顎位の計測は上顎研究用模型とシリコーンチェックバイトを利用して本研究者により購入した咬合分析装置で行った. MKGによるデータは実験中, データレコーダーに記録され, その後再生し, 三次元的に各々の方法による下顎位を分析した. 以上の実験から, 頸反射とEMGバイオフィードバック法による下顎位は明らかに, 水平的には中心位より前方であり, タッピング法より後方に位置していた. また筋肉位による下顎位は本法による下顎位を中心にしてデータにバラツキが観察された. マイオセントリック位による下顎位は垂直的には本法による下顎位と類似しているように見られるが水平的には本法による下顎位より大きなバラツキを示した. 一方顎口腔系異常者を被検者とする実験では正常有歯顎者の結果とその傾向は同一であった. 以上の実験結果は頸反射とEMGバイオフィードバック法による下顎位は他の方法に比較し再現性に優れ, 咬合位の決定法として臨床上極めて有効であることが確認された. 昭和63年度はこれらの結果をふまえ, 例数を増加し, さらに検討を加える.
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