研究概要 |
有髄歯を支台歯形成する際に, 形成面と歯髄との接近の程度, すなわち残存象牙質の厚さを定量的に測定することは, 術中の露髄を察知したり, 術後経過を予測したりする上で重要な意義がある. 筆者は, 従来から, 超音波パルス反射法を応用して, 残存象牙質の厚さ測定に検討を加えており, 測定したい部位に超音波探触子を当てれば, その直下の残存象牙質の厚さ測定を可能にした. しかし, この方法では測定の対象が点に限られ, 形成面上のいずれの部位が歯髄との最接近部であるかを正確に把握することは困難である. その意味から, 歯髄の形態を超音波的に作図すると同時に, 各部位における残存象牙質の厚さを判定することができれば, 臨床的に大いに役立つ. そこで, 筆者は, 形成面上から歯髄腔の位置を判定することを目的として昭和62年度は, 基礎的実験段階として, 履歴の明かな新鮮抜去歯牙に支台歯形成を行ない, その形成面上からの画像作製を試みた. まず, 現有している歯科用超音波厚さ測定装置の探触子(10MHz)を形成面上の一方向に一定速度で移動させ, いわゆるスキャニングを行なった. そして, 得られた形成面と歯髄腔面からの超音波的なデータをパーソナルコンピューターを介して画像処理し, 同時に各部位の残存象牙質量をディジタル表示させた. その後, 超音波画像解析を行なった試料を切断して, 実際の残存象牙質の厚さを計測し, 表示されたディジタル値との比較検討を行なった. その結果, 現時点では, 形成面から歯髄までの距離および位置関係を高い精度で表現することが可能であることが明かとなっている. 昭和63年度は上記の結果を参考にして, 臨床的な検討を試みる予定である.
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