1.リポソームは生体膜モデルとして広く用いられている。歯科材料とくに重合性レジンモノマーの生体膜損傷のメカニズムを明らかにするため、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)を用いてルポソームを調整し、モノマーとの相互作用を核磁気共鳴装置(NMR)を用いて検討した。その結果、Methy1 Methacrylate Ethylene Dimethacrylateはそのプロトン1およびカーホン13ケミカルシフトを高磁場シフトさせた。このことから、モノマー類はりん脂質に取込まれることが明らかになった。メチルメタクリレート:41%、エチレンジメタクリレート:74%(取込量)。Bis-GMAモノマー/DPPCリポソーム系においては、モノマー類がDPPCと強く相互作用するための、数万回の積算後モノマーのカーボン13ケミカルシフトが検出できた。一級アルコールのBis-GMA異性体(Iso-Bis-GMA)はDPPCとより強く相互作用した。 特くに、酸化亜鉛ユージノールセメントに用いられるユージノールは、DPPCと強く相互作用し、DPPCのアシル基の運動を制限させた。これに反し、フエノールの相互作用は小さかった。ケミカルシフトの高磁場シフトは見られなかった。 2.歯科用金属塩類とDPPC/コレステロール系リポソーム相互作用を示差走査熱量計(DSC)により検討した。多価カチオン(Fe^<+3>、Zn^<2+>、Ca^<2+>)は1価カチオン(Na^+、K^+、Ag^+)よりDSC相互作用が大きかった。Ca^<2+>は膜安定作用を示した。アニオン類では、F^-に比べOCl^-の相互作用が大きかった。
|