研究概要 |
カンジダ・アルビカンスをはじめとするカンジダ属は, 口腔カンジダ症や義歯性口内炎の原因菌と考えられており, 付着がこのような感染の第一段階であると報告されている. しかし, その付着機構は, 未だ明らかではない. そこで, 本研究は, このようなカンジダ属の付着機構を明らかにするために, 62年度は, カンジダ属の個体表面への非特異的付着機構に関する研究を行ない以下の結論を得た. 1.カンジダ属の疎水表面への付着と菌体表面の疎水性の間には高い相関がみられ, 付着における疎水的相互作用の重要性が明らかとなった. 2.親水性表面に対する菌付着は起こりにくく, これはガラス面に導入した親水基によって疎水的相互作用が妨害されたためと考えられた. 3.カンジダ属は, 一般に負のゼーダ電位を持つが, 正に帯電したアミノ基を導入したガラス面に対し, 非常に高い付着を示し, 静電的引力の付着への寄与が明らかとなった. 4.逆に, 負に帯電したカルボキシル基を持つ表面に対する付着は起こりにくく, 静電的反発力により, あるいは, イオンー双極子作用による疎水的相互作用の妨害により付着が阻害されたと考えられた. 5.疎水性の高い菌株の付着においては, 疎水的相互作用の関与が大きく, 疎水性の低い菌株の付着においては, 静電的引力の寄与が優位であることが明らかとなった. 今後は, これらの非特異的付着因子に加え, 特異的付着因子について検討を行なっていく予定である.
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