研究概要 |
1.ヒト末梢血多形核白血球の活性酸素(スーパーオキサイドアニオン)生成に及ぼす抗癌剤の影響に関する研究について. 多形核白血球(PMN)は, オプソナイズザイモザン(OZ), 或いはミリスチン酸(PMA)などの刺激剤により, 活性酸素を産生するが, 本研究費で購入したルミネッセンスリーダーを用いて, 活性酸素産生能を化学発光として捕捉すると経時的に定量可能となった. 健常人末梢血よりPMNを比重遠心法により分離した後, 5×10^5個/mlの浮遊液を作成し, ブレオマイシン, ペプロマイシン, マイトマイシン, シスプラチン, アドリアマイシンなどの抗癌剤を添加し, その影響を検討した. その結果, ブレオマイシン, ペプロマイシンは濃度依存生に活性酸素産生を増強した. 更に, 増強の強度はペプロマイシンがブレオマイシンの約2倍の効果を示した. このことは, 本剤の抗腫瘍活性及び, 間質性肺炎の発症メカニズムに深く関与することが示唆され引き続きマウス腹腔内マクロファージの機能に対する影響に関して検討する予定である. 他の抗癌剤については, PMNの活性酸素生成系には何ら影響を示さず高濃度ではむしろ抑制的であった. このことは, 従来, フリーラジカルの生成により抗腫瘍効果を有するとされていたこれらの薬剤の薬理作用に関して再検討が必要ではないかと思われた. 2.口腔癌患者PMNの抗癌剤投与前後における活性酸素産生能について, 少数例ではあるがペプロマイシンの投与前後において活性酸素産生は低下するが, ペプロマイシンをin vitroで添加すると, 投与前の2〜3倍の増強効果を認めた. 引き続き臨床患者の白血球機能を検討する予定である. 3.各種抗癌剤の生成するフリーラジカルのESRによる検出について, 現有のESR機器が不調なため十分な研究を果し得なかった. 63年度, 機器更新の予定であるため再検討したい.
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