今年度、研究者はプレオマイシン類のフリ-ラジカル増強のメカニズムを解明する目的で、可及的に生体内での活性酸素生成系に近い反応系を用い、両薬剤の添加効果を比較検討した。活性酸素の測定法として、O^-_2に特異的なCLA依存性化学発光法と・OHの最も鋭敏な測定法であるESRスピントラップ法を用いた。その結果、(1)健常人多形核白血球のO^-_2産生能はOZ刺激、PMA刺激いずれにおいても、BLM濃度1μg/ml〜25μg/mlの範囲で濃度依存性に増強した。またSOD50U/ml添加によりこの増強効果は完全に抑制された。更にCDDP、MMCを同様の濃度で添加してもO^-_2産生能は、ほぼ変わらず高濃度ではむしろ抑制する傾向がみられた。(2)HPX-XOD系におけるO^-_2の産生に対するBLM、PEPの影響をCLA依存性化学発光法を用いて検討した結果、各々の濃度に比例して増強作用を示した。(3)鉄一過酸化水素系に及ぼすBLM、PEPの影響:2価鉄イオンと過酸化水素との反応で生成される・OHはPBNにトラップされ、ESRスペクトルは等強度6本線を示し、その超微細結合定数はa_N=1.55mT、a_Hβ=0.27mTとなりPBN-OHのspin adductであることが確かめられた。この反応系に対するBLM、PEPの添加の影響をみると、BLM及びPEP共に濃度に比例してESRシグナルを増大させた。以上の結果より、両薬剤共に5μg/mlくらいの低濃度から濃度依存性にフリ-ラジカルの増強作用を示した。また、同一濃度ではPEPはBLMの約20〜30%強い作用を示し、逆に同程度の増強作用を発現するためには、PEPはBLMの約1/2の濃度でよいことが確認された。さらに、SODあるいは金属キレ-ト剤の添加実験より、このような増強作用には鉄イオンが必須でありO^-_2あるいはH_2O_2などの還元剤により増強されることから、従来の学説とも一致する結果を得られた。
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