研究概要 |
頭部固定装置を設計, 作製した. 本装置は 1.乾燥骨を用いた擬似疾患について, 病変の検出限界を決定すること. 2.生体を対象とした口内法撮影において, その規格化を図ることを目的として設計された. 頭部規格撮影における頭部固定法とほぼ同一で, すなわち耳桿により左右ならびに前後方向の固定を図り, また顎おさえにより上下方向の固定を行なった. 乾燥骨においては, さらに正中矢状面と左右耳桿を結ぶ線分との交点を中心として, いづれの三方向への回転を可能とし, その回転角度の測定をも可能とした. 本研究の第一の目的は乾燥骨にX線透過性の擬似疾患を作製し, 病変の大きさないし, 密度についてその検出限界を決めることであった. これは同時にX線の投影角度, 写真濃度その他の因子の影響を受けるため, これを考慮した実験モデルを作る必要があった. したがって例えば投影角度については前述の固定装置を必要とした. もう一つの問題は擬似疾患の作製法であった. かつて我々は隣接面エナメル質ウ蝕の作製にあたって, ドリルで穴をあけそこを軟部組織相当物質によって埋める手法を用いた. 研究目的によってはこれでも良いが, 本研究においては不適切といえる. 人工的に脱灰病巣を作ることは液のPH, モル濃度, 温度時間等を考慮したものの現在のところ成功していない. 骨の透過性病変についてはさらに困難が予想される. 口内法撮影の規格化は本装置により一定の成果を得た. この場合, X線焦点-被写体正中矢状面までの距離を150cmとし, 照射野は患者皮膚面において6cmφとした. フィルムは事前に得た歯型から平行法用ホルダーを用いて固定した. 後ボランティアを対象とした月1回の撮影で得られた複数のX線写真の幾何学的再現性は定量的と評価された. それは極めて満足のいくものであり今後, 主に歯槽骨の変化の経年的変化を把握する上で, 重要なステップとなった.
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