研究概要 |
1)ディジタルイメージスキャナを用いた高速画像処理システム 昨年度にディジタルイメージスキャナは,ダイナミックレンジが狭くその儘では定量分析をし難い事が判明した。このため,(1)複数のピクセルの平均を取る事(2)ホワイトバランスボードを替えて低濃度域高濃度域に分けて入力する事を試みた。この結果黒化度1.8程度迄は定量分析が可能となる目途が立った。しかし,尚ダイナミックレンジが不足のため,錫フィルタに代えてランタンを含む希土類増感紙をフィルタとし,利用するX線の線質を硬くする事でX線コントラストを下げて,被写体に対するダイナミックレンジを広げる事を検討した。この結果,手指骨程度の薄い被写体であれば骨ミネラルの定量が可能となる目途が立った。 画像処理を高速化するために浮動小類点演算ボードを導入し,機械語でこれを駆動するリフトウェアを開発中である。 2)移植人工骨周囲の新生骨の成長過程の観察 家兎下顎骨に移植した高密度ハイドロキンシアパタイト周囲の新生骨の成長過程を,移植後1年迄,本法および組織学的方法で観察した。 新生骨は移植後1か月から石炭化を始め,3か月後頃迄に移植したアパタイト試料を包む様になる。1年後には,新生骨は肥厚し成熟した層板骨に置換する。この様子を本法で観察した所,上記の組織学的観察とほぼ一致する結果を得た。すなわち,移植後1か月では骨ミネラルは検出せず,3か月では0.3g/cm^2の骨ミネラルを検出した。1年後では,骨ミネラルの沈着領域は拡大していた。ミネラル量は,3か月とほぼ同じであった 以上の様に,本法は薄い被写体中ではあるが,骨病変の骨ミネラル量の変化を,非観血的に定量的観察をし得る。今後,画像処理の高速化と共に,厚い被写体の測定を可能にして,臨床に応用していく予定である。
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