研究概要 |
最近Hydroxy apatite(以下HA)が人工骨として広く臨床に応用されているがHA単材のBlock型のものは形態付与が困難であり, また細粒型は組織内に散在したり流出する欠点がある. そこで私達はそれらの欠点を補う目的で細粒型HAとゼラチンの複合材を考案し, その有用性について実験を行なった. 〈方法〉 材料はHA細粒(約0.5〜2mm)に加熱蒸留水に溶解したゼラチン(Difco)を加え冷却凝固により形成後37°Cで一夜乾燥したものを複合材として用いた. ゼラチンとHAの混合重量比は1:10とした. また比較実験の為HA細粒単材およびゼラチン単材の凝固乾燥物を用いた. 実験動物は成熟家兎を用い, その下顎骨外側の骨と骨膜の間に複合材および各単材を移植し, 1週, 2週, 4週, 12週, 24週における組織反応について組織学的検討を行なった. 〈結果〉HA-ゼラチン複合材移植後1週目には, ゼラチン部に沿って線維芽細胞と血管を主体とする肉芽組織が複合材の辺縁より中心に向かって侵入, 2週目には, 骨よりHA細粒間に向かって幼弱な骨新生がみられた. 4週目には, 下顎骨より複合材に向かってそのHAに直接接して骨新生を認めた. 12週目にはさらに骨新生は進み, HA細粒を包むような新生骨を認めた. 24週目にはHA細粒間の骨は成熟した層板骨となり, 骨新生部以外のゼラチン部分は線維性組織に置換していた. しかし特に著しい炎症反応は認めなかった. 以上の結果より本複合材の臨床応用の有用性が示唆された.
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