研究概要 |
ヒト唾液腺癌細胞(HSG)1×10^7個をヌードマウス背部皮下に移植して, ヒト唾液腺癌ヌードマウスモデルを作製した. 1.この系において推定腫瘍重量が100-200mgに達した時点で無作意に1群5匹に分け, 抗癌剤の投与量あるいは投与方法と腫瘍増殖抑制効果との関係を検討した. その結果, シスプラチン(CDDP;総投与量6-8mg/kg)の腹腔内投与により50%前後の腫瘍増殖抑制が認められ, 総投与量が15mg/kgを越えると副作用死亡例の増加が認められた. すなわち, CDDPを実験第1日目に8mg/kg1回投与を行った場合, 3日目には有意な腫瘍増殖抑制を認め(P<0.05), 21日目の腫瘍増殖抑制は41.5%であった. マイトマイシンC(MMC)では総量100-150mg/kg腹腔内投与により, 約50%の腫瘍増殖抑制が認められた. 2.HSGヌードマウス腫瘍に生理食塩水で0.5mMに調整したdibatyryl cyclic AMP(dB-cAMP)を総量3-5ml移植腫瘍局所に投与した結果, 腫瘍の増殖は抑制された. 更に摘出腫瘍組織において, 腫瘍細胞に発見されている特異抗原を酵素抗体法により検索した結果, ミオシン及びS-100b蛋白陽性細胞の増加を認める一方, 癌胎児性抗原, ラクトフェリン, Secretory component陽性細胞は減少していた. 3.in vitroの系においてHSG細胞の増殖率, 軟寒天中でのコロニー形成率, 姉妹染色分体交換(SCE)誘発率, ras癌遺伝子産物(ras p21)の発現率を検討した結果, CDDPあるいはMMCで処理したHSG細胞では, 薬剤濃度に依存してコロニー形成率の低下とSCE誘発の増加を認めた. HSG細胞をdB-cAMP単独処理した場合, コロニー形成は抑制されたがSCE誘発の増加は認めないのに対し, dB-cAMPと抗癌剤で併用処理すると, 抗癌剤単独処理に比較して著明なコロニー形成の抑制とSCE誘発率の増加を認めた. 更にdB-cAMPと抗癌剤で併用処理した場合, HSG細胞のras p21の発現は, 抗癌剤単独処理に比較して有意な抑制が認められた(P<0.05).
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