研究概要 |
乾燥頭蓋骨の上顎洞に破壊性病変を実験的に設定し, パノラマX線撮影, ウオータース法, およびCT検査を行い, 破壊性病変の診断におけるパララマX線撮影の価値と限界を追求した. 破壊性病変の設定部位は, 上顎洞後壁の中央部, 上顎洞後壁の翼口蓋窩前方部, 上顎洞後壁の上顎結節上方部, 上顎洞後壁の〓骨突起部, および〓骨下稜とした. 破壊性病変の大きさはそれぞれ直径5mm, 7mm, 10mmとした. 本研究により得られた結果を要約すると以下のとおりである. 1.CTでは, 各破壊性病変の設定部位ともに, 直径5mm以上の破壊性病変の検出にすぐれている. 2.パノラマX線撮影では, 上顎洞後壁の上顎結節上方部と〓骨下稜において直径5mm以上, 上顎洞後壁の翼口蓋窩前方部においては直径7mm以上の破壊性病変の検出が可能であった. 3.ウオータース法では, 〓骨下稜における直径5mm以上の破壊性病変のみが検出可能であった. 以上のように, パノラマX線撮影は上顎洞の破壊性病変の検出に関しては明らかにCTには劣るが, ウオータース法よりもすぐれているという結果が得られた. しかしながら, 今回の研究は乾燥頭蓋骨の使用により行われたものであり, 生体にみられる軟組織などは全く無視されている. 今後は正常軟組織を実験的に設定した上で, 各種X線検査法による破壊性病変の検出能につき追試すべきと思われる. X線画像の処理方においても, 通常の諧調処理から周波数処理に変換することにより, 破壊性病変の検出能に差が生じることが予測される. 今後はパノラマX線撮影に, コンピューター・ラジオグラフィーを導入することにより, 更にパノラマX線撮影の特徴が生かされるように思われる.
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