研究概要 |
歯根嚢胞の顎骨吸収機構にプロスタグランジン(PG)の関与が示唆されている. また, 原因菌にBacteroldes andadontaltsが注目されている. 本研究では, ヒト歯肉線維芽細胞(HFcell)培養系に, B.endodantalisHG181株菌体及びB.gingivalis381株菌体を作用させ, HFcellのPG産生量を測定することを計画した. 〈方法〉(1)ADAM試薬で蛍光ラベルしたPGSをHPLCで分離, 定量し, 分光蛍光検出器を用いて分析法を確立した. 次に菌体を添加したHFcell培養液中のPGS産生量を測定したが, 定量不能であった. そこで, ^<14>Cアラキドン酸(AA)でHFcellを標識し, ^<14>CPGSのradioactivityを測定する高感度な方法を用いることとした. (2)B.endodantalis株, B.gingivalis株, E.colic-600株を培養, 集菌後, ホルマリン固定し, PBSで洗浄(×5), PBSに懸濁した. (3)HFcellを10%FCSPMEN mediumにて培養し, 培養液中にジフェニルヒダントインを添加し, 無添加系と比較したところ, 著明に細胞分裂が促進され, 細胞数の増大が認められた. よってHFcellとして機能していることが確認され, 細胞数の増大が認められた. (4)^<1-1>CAA(0.4uiCi/10nmol)で標識したHFcell培養液(5×10^5cell/dsh)中に, (2)の菌体(2.5×10^6cel)を投与し, 4時間作用させた後, 培養液中に遊離した^<14>CPGSをケムコセップで抽出, HPLCにより定量を行った. 〈結果〉B.endodantalisを投与したHFcellは顕著なPGE_2の遊離が認められた. B.gingivalis, E.collを投与したHFcellでは著明なPGSの遊離は認められなかった. 〈考察〉歯根嚢胞がPGE_2を産生することが知られており, また, 主として嚢胞壁の線維芽細胞がPGを産生するといわれている. 本実験の結果, 原因菌として注目されているB.endodantalis直接HFcellに作用してPGE_2を産生させることが判明した. 今後B.endodantalis菌体の構成成分のPGE_2産生作用の同定と, 種々の病原細菌の確立を行いたい.
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