研究概要 |
近年、歯根嚢胞内容液中から種々の嫌気性菌が分離され、歯根嚢胞の骨吸収に重要な役割を果たしていることが判明している。本研究では、これら嫌気性菌が産生するプロテアーゼ活性を測定するとともに、歯根嚢胞の原因菌として示唆されているB,endodontalisがヒト歯肉線維芽細胞 (F.B.) およびヒト歯肉上皮癌細胞 (Ca) に及ぼす影響を検索した。 (1) 種々の嫌気性菌の細胞内、細胞外酵素を合成基質を用いて測定を行ったところ、B.endodontalisではGly-Pro peptidase,kallikrein活性が、B.gingivalisではGly-Pro peptidase,kallikrein,Typsin活性が、B.intermediusではCathepsin H,Gly-Pro peptidase活性が、B.oralisではkallikrein活性が高かった。 (2) F.BおよびCaを〔^<14>C〕アラキドン酸で標識し、releaseされたアラキドン酸代謝産物の同定と定量を行った。B.endodontalisで刺激したF.B.では著名なPGE_2の遊離が認められたが、無刺激のF.B.およびE.coliで刺激したF.B.ではPGE_2の遊離は認められなかった。B.endodontalisを作用させてF.B.のPGE_2産生の経時的変化を測定したことろ、6.5時間でピークを示した。作用させる菌体数の影響を調べたところ、菌体数に対応してF.B.のPGE_2産生量も増加した。またCaではB.endodontalis刺激のもの、無刺激のものともPGE_2産生は極めて低かった。 (3) B.endodontalisでF.B.およびCaを刺激した細胞培養上清を用いて各種プロテアーゼ活性を測定した。菌体刺激により、F.B.ではPlasmin活性が、CaではElastase活性が上昇した。 〈考案〉 B.endodontalisで刺激するとF.B.は骨吸収因子であるPGE_2やフィブリン分解酵素であるPlasmin産生が増加し、また、B.endodontalis自身も種々のプロテアーゼを産出することから、B.endodontalisは歯根嚢胞の骨吸収に深く関与していることが示唆された。
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