う蝕原性細菌strepococus mutansの母から子供への伝播において、関与する菌量の感染の成立に最も重要な因子であることを、ラットを用いた実験系で明らかにし、"Microbiology and Immunology"誌に発表した。また感染に関与する菌量だけでなく、感染頻度さらにはスクロースの存在も、この細菌の口腔内への定着に有意に伝用することを示し、"Journal of Dental Research"誌に発表した。これら動物における研究成果をもとに、日本人小児におけるS.mutansの伝播と定着の機序を調べることとした。最初に本院小児歯科における小児のう蝕罹患状態と唾液中のS.mutans数との相関を調べたところ、強い相関が示された(小児歯誌に発表)。次に母親の唾液中のS.mutans数を調べたところ、その子供のう蝕罹患状態および唾液中S.mutans数との間に有意の相関が認められた。これらヒトにおける調査結果は、動物実験で示されたのと類似の所見を示しており、母親から子供へのS.mutansの伝播・定着の成立には、母親の口腔内のS.mutans数が決定的な役割を果たすことを示唆している。
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