う蝕原性細菌Streptococcus mutansの母から子供への伝播に影響を及ぼす菌量についてラット実験系で検討した。またラットあるいはマウス口腔内へのS.mutansの定着を接種菌量と接種回数を変化させて検討した。その結果、S.mutans MT8148R(血清型C)、6715(g)ともに母ラットに棲息するS.mutans菌数が多いものほど、その子供の下顎より早期にしかも菌数も多く供試菌が回収された。しかし、母ラットから子供ラットへの伝播は臼歯か口腔内に萠出した後にのみ認められた。さらに55日齢まで飼育した子供ラットのう蝕と離乳時の母ラットのう蝕との間には相関が認められた。 ラットあるいはマウス口腔内へのS.mutansの定着では、両株とも接種菌数が同じときは10回接種した方が1回接種よりも明確に定着した。また低接種菌量では、スクロースの影響が著明であった。 以上の結果は、母ラット口腔内のS.mutans菌量がその子供へのS.mutansの伝播に影響を及ぼし、また、S.mutansの定着は感染機会の増加あるいはスクロースの存在により促進されることを示唆している。
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