研究概要 |
我が国では, 10歳以上の男女の90%以上に何らかの歯周疾患が認められると言われている. 近年, 成人を対象にした疫学調査は多いが中学生及び高校生を対象にした研究は比較的少ない. そこで本研究では初年度として埼玉県下の私立中学校の生徒234名(1年生;83名, 2年生;75名, 3年生;76名)を対象として歯周疾患罹患状態はPMAindex及びCPITNを用いて評価した. 同時にう蝕経験についてもDMFTindexを用いて評価すると共に, 歯口清掃状態(OHI-S)とサリバスターBldを用いた唾液中潜血量についても評価を行った. その結果, PMAindexの平均値は各々1年生2.24, 2年生1.86及び3年生1.72と減少傾向を示した. この結果と同様にCPITNについても学年が進むにつれて値が減少し, 又, サリバスターBldの結果からも多量出血を示す者が減少して行くことが判明した. これらの歯周状態の改善は, 歯口清掃状態の改善によるものと推察された. すなわち, OHI-Sの平均値をみると1年生で0.97, 2年生で1.04を示したが3年生では0.88と低い値を示していた. 一方, う蝕経験についてみると, DMFTindexの平均値において1年生2.65本, 2年生2.84本及び3年生5.59本と3年生で極めて高くなっていることが示された. この内訳をみると圧倒的にF歯が増加しており, Grade別ではC_1が増加していた. このことは, 1年生から2年生にかけての口腔環境に問題があってう蝕が発生したものの, 3年生で自分の健康に関する関心度が高まることにより処置率の向上が認められたものと推察された. 関心度については同時に実施したアンケート調査により, 学年が進むにつれ「歯は健康に余り関係しない」と答えた者が減少して行くことからも推察しうると思われる. 心理的要因は, 交絡因子として非常に重要であるが教育・知識度との関連も強いと考えられる. 高校生に同様の試みを実施し分析することでより明らかな交絡因子を把握したい.
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