研究概要 |
研究目的 矯正治療の目的の一つに, 歯周疾患の予防と治療が挙げられ, また矯正治療中に口腔清掃不全による歯肉炎がしばしば生じる. このように咬合異常と矯正治療と歯周疾患は密接な関係がある. 不正咬合と歯肉毛細血管の形態との関連や矯正治療に伴うそれらの変化について臨床的に毛細血管顕微鏡写真法を用い, 既に報告した. その一環として, 歯肉炎下において, 歯の移動を行った時に生じる歯周組織の変化を, 血管鋳型法を用いて血管像の三次元的立体構造の変化を把握するとともに, 歯槽骨と血管網との関連について検索しようとするものである. 研究計画及びその成果 1.実験材料としてイヌを用いた. まず正常対照群の歯肉の血管網を観察した. 乳頭直下の粘膜固有層に, 比較的平坦な細動・静脈からなる血管網が構築され, この血管網からの細枝が乳頭に入り, 毛細血管ループを形成していた. 歯根膜の血管網は二重構造で, 歯槽骨側は太い血管からなり, 歯根側では, それより派出した細い血管によって網目がつくられていた. 2.正常対照群での歯の移動の際に生じる歯根膜腔の毛細血管網の観察を行った. 圧迫側において, 血管の断端の形態は偏平や細くなっていた. またところどころに, 血管鋳型消失部がみられ, 時間の経過とともに束状血管網より派生した血管がループを形成し消失部に多数侵入し同部の修復が行われていた. 牽引側においては, 血管網は移動方向に一致したループ状へ変化しており, また軽石状の骨添加が生じていた. 3.歯肉炎群の歯肉の血管網の変化について, 炎症が進むと, 上皮が増殖を起こし, 血管網は深部へ押しやられ, 毛細血管の網目の4〜5ブロックがループとなり複雑なループを形成していた.
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