研究課題/領域番号 |
62570926
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
松本 光生 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00084294)
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研究分担者 |
川越 仁 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (40131859)
伊東 隆三 福岡歯科大学, 歯学部, 助教授 (90122770)
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キーワード | 歯肉炎 / 矯正的歯の移動 / 血管鋳型標本 / SEM / 実験的研究 |
研究概要 |
不正咬合および矯正治療と歯周疾患とは密接な関連がある。昭和62年度は、イヌを用い正常群の歯の移動を行い光顕的、血管鋳型標本による電顕的観察を行った。今年度は歯肉炎を生じさせた実験モデルを用いて歯の移動を行いその影響について検討した。まずプラークが存在しなければ、歯肉炎は生じず歯周疾患の進行の重要な因子は歯肉ポケット内の細胞性プラークであることが解った。プラークにより生じた慢性炎症により歯肉の腫脹、歯槽骨の吸収が認められた。歯肉毛細血管網所見において、内縁上皮直下では正常歯肉でみられたヘアーピン型毛細管ループは消失し慢性炎症を示す腎糸球体様血管網が認られた。また歯槽骨は吸収されており、そのために歯頚部歯根膜の血管網は歯根中央付近まで広がっていたが、その配列は不規則であり、ループ形成も明瞭ではなかった。この歯肉炎状態下で150gの矯正力で歯の移動を行い正常群と比較した。正常群圧迫側では、歯根膜血管網は圧縮され二層構造が崩れ一層構造に集合した像を呈した。歯槽骨表面には多数の吸収窩が認られた。一方牽引側では歯根膜線維の伸長とともに毛細管ループも牽引されまた新生骨の添加が順調に行なわれた。しかし歯肉炎群圧迫側では移動開始1日目に、すでに部分的に歯根膜血管網が消失し歯槽骨の露出が認められた。露出部では吸収窩とフォルクマン管の大部分は消失し、周縁部を取り囲んで吸収窩が形成されその中にループが侵入していた。他の部の血管網正常に近い像を呈し歯の移動が停止したことを示唆した。時間の経過とともに露出部は吸収され血管網も修復され歯の移動が再開したことが解った。血管消失期に炎症が波及すると防御機構が働かず垂直性骨吸収が進行し重篤な症状をもたらすことが解った。以上の結果より治療にあたってプラークコントロールの徹底が重要であり、持続的な弱い力による歯の移動を行うことが重要であることが示唆された。
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