研究概要 |
稲ワラ完熟堆肥の熱水抽出物をゲルロ過クロマトグラフィーに掛け9画分に荒分けし, 珪藻の増殖に対する効果を試験した結果, 第2画分に抑制活性が, 第9画分に促進活性が顕著に認められた. 第9画分から促進活性物質としてアデノシンおよび2′-デオキシンPデノシンを既に単離, 同定した. 本年度さらに, 第2画分の抑制活性物質の精製を高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)により検討を重ねたが, 特定のピークに活性を見出すことに最終的にはまだ成功していない. 一方, 珪藻はその生育中に自己増殖阻害物質を生産放出するため, その増殖速度が次第に低下すること, また培養液中に活性炭を添加して培養すると珪藻の収量が増加することから, この活性炭に吸着したと考えられる自己増殖阻害物質の精製を検討した. まず活性炭からの活性物質の溶出を各種の溶媒を用いて行ったことろ, ピリジンのみが非常に有効であった. ピリジン溶出物を有機溶媒と水による溶媒分配に掛け, 最終的に酢酸エチル可溶部に阻害活性を認めた. つぎに酢酸エチル可溶部をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)に掛け, クロロホルムおよび1%メタノール/クロロホルム溶出画分に阻害活性を見出した. さらに両活性画分をそれぞれ分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル, 3%メタノール/クロロホルム)で精製したところ, 前者のRf4.7-5.3画分に強い阻害活性を認めたが, 後者の場合は活性が特定の画分に集中して現われなかった. ついでRf4.7-5.3画分を分取HPLC(リンアグラジェント)で精製し, 12画分に分離した. 生物試験の結果顕著な活性を3画分(第5, 8, 11)に認めた. 今後, 活性を見出した3画分についてイソクラティック条件で分取HPLCを行い, 最終的に単一ピークとして阻害活性物質を単離し, 構造決定を行う予定である.
|