硫酸基をもった糖脂質の一群であるスルファチドの化学的純合成は、基質となるべきスフィンゴ糖脂質の合成、スフィンゴ糖脂質への位置選択的硫酸化の二つの過程よりなる。スフィンゴ糖脂質は、セラミドと糖部から成立っており、セラミドはさらにスフィイゴシンとアシル部にわけられる。天然スフィンゴシンは炭素鎖が16〜18のものの混合物である。従って、化学的に純粋なスルファチドを合成するためには、スフィンゴシンの純粋な合成が必須となる。このような各種のスフィンゴシンは、単一の共通中間体より合成するのが最も効率よく、望ましい。 本年度はこの問題に焦点をしぼって研究を行った。そのため、スフィンゴシンの二つの不斉中心の構築に、キラル源として天然に豊富な糖類を利用することを考えた。 まず、糖類の位置選択的な酸化法を確立し、オキソ糖類の効率よい合成法を開拓した。次にこれらを立体選択的にアミノ基に変換して、アミノ糖類の有効な合成法を開発した。この方法でえた4-アミノ-4-デオキシアラビノースより、短工程で下記の構造の、目的の共通中間体を合成した。本品は、各種のイリドによるWittig反応によってスフィンゲニン類を、またグリニヤル反応によってフィトスフィンガニンを(保護された形で)うることができる。また、本研究のさらなる成果として、グルコシダーゼ阻害剤として注目されている抗生物質のジリマイシン(5-アミノ-5-デオキシ-D-グルコース)の実用的な合成法を開拓することができた。
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