研究概要 |
1.特定の塩基を認識する機構の研究:RNaseT_1のグアニン特異性をアデニン特異性に変えることにを試みた. RNaseMs(グアニン優先的ではあるが, アデニンも認識できる)との一次構造を比較検討し, 2種類のハイブリッドプロテインを作製した. i)RNaseT_1のグアニン認識部位Tyr^<42>-Asn^<43>-Asn^<49>-Tyr^<45>をRNaseMsの配列Tyr^<42>-His^<43>-Asp^<44>-Tyr^<45>にした変換体. ii)塩基認識部位を含むループ部分(Val35〜Pro55)をRNaseMsの相当する部分(Ile34〜Ser55)に変えた変換体. 基質にpGpCとpApCを用い, pH7.5とpH4.6の2種類の条件で活性を測定した. いずれの変換体もRNaseT1に比べるとグアニン塩基特異性をアデニン塩基特異性にすることができ, この傾向はpH7.5の方が高かった. しかし活性の絶対値は著しく低下した. 以上の結果を基に, モレキュラーダイナミクスを加味し, 活性の絶対値をできるだけ下げずに, 特異性を変換させることを現在検討している. 2.RNA鎖切断反応機構の研究:著者らはRNaseT_1の触媒反応について『His40とHis92が直接関与する残基で, Glu58はその働きをサポートする残基である』という機構を提示した. RNaseT_1と類似の一次構造および機能を持つRNaseがカビ, 細菌から今までに多数発現されている. His92, Glu58はいずれにも存在するが, 細菌由来のものではThr(RNaseSt), Asp(RNaseBa, Bi)に置換している. Thr, AspがHis40の代役を果しうるのか, すなわちRNaseStやRNaseBa, BiでもGlu58-His40-2-OHのCatalytic triadの機構が成り立つのか否かを調べた. Thr40, Asp40変換体はいずれも活性が著しく低下し, 結論は否であった. RNaseSt, Ba, Biではおそらく, Glu58-His92による機構で行なわれているものと推測される. 一次構造上, 類似したRNaseでも真核生物と前核生物との間には大きな違いがあると考えられた.
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