研究概要 |
液晶構造の特異性を有機反応に反映すべく以下の光反応及び熱反応例につき検討を行い, 反応選択性の向上とその支配因子の解明を行った. 1.核酸塩基(チミン, ウラシル類)の種々の液晶媒体下での光二量化反応に於て, 生成物分布と収率に与える液晶の特異性・選択性を精査した結果, 高秩序度のスメクチック相下で, 従来等方性溶媒や固相中では認められなかった高選択的・高収率のウラシル誘導体光二量化が認められた. しかし, スメクチック相以外のネマチック相やコレステリック相下では, まだ満足出来るほどの液晶の特異性・選択性が得られていないので, 更に検討をする. 2.高秩序に配列した反応性(機能性)液晶及び親ジエン体としての種々のフマル酸コレステリル誘導体を合成し, その一部がアントラセン及びシクロペンタジエン類との熱環化反応に適した温度域を持つ光学活性液晶となることを見いだした. これらの熱環化反応を液晶相と等方性相との両相下で行い, 付加体の不斉収率を目安として反応選択性を精査したところ, 等方性相下での反応に於ては殆ど不斉選択性は認められなかったのに対し, 液晶相下では不斉収率が最高20%にも達する有意の選択性が認められた. 更に高い不斉選択性を求めて種々の反応性液晶の設計・合成及び反応条件の検討をする.
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