研究概要 |
強心作用をもつ植物成分の一つプロシラリジンの六員環ラクトンを, 各種の脂肪族アミンと反応させてラクタム類を合成した. 又, この不飽和ラクトン環, およびラクタム環の二重結合に, アセチレンカルボン酸ジメチルエステルをDIEIS+AEDER反応させて付加化合物を得た. さらに, その一部については還元を行なった. つぎに, ラクトン環の二重結合, およびステロイドA環の二重結合を酸化して, エポキシド体, およびそのエポキシド環が水酸基と反応して生ずる二次成績物を合成した. また, ラクトン環をメタノール性アルカリで開環させたのち, 酸化を行なって数種の新規化合物を合成した. 一方, 14位の三級水酸基を各種エーテル化合物に誘導した. これらの誘導体について, モルモット摘出乳頭筋における陽性変化作用と, 犬賢ナトリウム・カリウムATPase阻害作用を検討した. その結果, 阻害作用とラクタム類のファンデァワールス分子容積値との間には, かなり良い相関関係が認められた. 一方, ニワトリのコクシジウム病に広く用いられているモネンシンを, 原料として, その化学修飾を行なった. 心筋のモデルとして, モルモット赤血球を用いて, その細胞膜の内外のナトリウムイオン量を, 核磁気共鳴法で測定し, モネンシン誘導体のナトリウムイオン輸送能を検討した. 合成したこれらの誘導体は, 多量のナトリウムイオンを赤血球内へ, 移動させる能力をもっていることが示されたが, 一方で, これらの化合物の陽性変力作用は予想に反して弱いことが判った. 今後このナトリウム移動量と, 陽性変力作用の大きさの傾向との関係を明らかにし, 心筋細胞そのものにおけるナトリウムイオン移動についても検討を加え, ナトリウムの流入と強心作用発現との関連も明らかにしたい.
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