研究概要 |
発癌性エリールヒドロテシルアミンの反応種であるアリールニトレニウムイオンはDNA中のグアニン(G)残基のC-8位に付加体を与えることが知られている. しかしなぜ求電子反応が, Gの他の求核部位に起こらずC-8位に起こるかは未だ不明である. 我々はその機能を明らかにするために, 簡単なモデル化合物としてNH_2OSO_3H;(HAOS)やNH_2O(2,4,-dinitrophenyl);(DNPA)を用い核酸塩基のアミノ化反応を行い, 基礎的知見を得ることを目的とした. 1.HAPOとグアノシン(G_Rf)をpH2〜4で反応させると8-アミノG_Rfが生成するが, この機構を明らかにするため, G_RfとDNPAとの反応で得られる7-アミノG_Rfを用いていろいろ検討したところ, HAOSとGRfが反応して, まず7-アミノG_Rfを生成し, その後HAOSの分解産物であるNH_2OHが7NH_2-G1RfのC-8位に求核的に付加し, 7位のアミノが脱離して, 8-NHOH-G_Rfとなり, これが更に反応系中に存在する多量のNH_2OHにより還元され, 8-NH2-GRfとなる事を明らかにした. 即ちHAOSによる8-NH_2-G_Rfの生成機構は, GRfのC-8位に直接求電子的にアミノ化が進行したのではなく, 7-NH_2-G_nfを経由して生成したものである. 発癌性アリールヒドロキシルアミンについてもこのような反応機構が存在するか否かについては現在検討中であるが, 4HAQOを用いた実験ではONA中に4HAQOの付加体の他に, 8-ヒドロキシグアニン残基の生成が認められ, この事は4HAQOの反応種が, GのN-7位に付加している可能性を示唆するものである. 2.グアニン(G)のリングのN, (N^1,N^3,N^7,N^9)にアミン基を導入した四つのN-NH_2-G異性体を合成した. 3-NH2-Gの合成には, 以前報告した. 6-メチルGを出発原料に用いて成功した. 7-NH_2-GのX腺解析による結晶構造は抗ウイルス性8-OH-Gのそれと類似しており, 7NH_2-Gの生物活性が期待され, 現在検討中である.
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