研究概要 |
Cuclopane環は、炭素3つのユニットを与える重要な化学種で、広く有機合成化学に利用されているが、これを不斉合成に直接利用した例はない。そこで、Cyclopropane環上にキラルなsulfinyl基を導入し、cyclopropane環の環交換におけるキラルsulfinyl基の影響について検討した。 (R)-(+)-p-Toluenesulfinylcyclopropane(1)のα-Carbanionがacetopheroneと結合して生成する(Ss)-1-(1-hydroxy-1-phenethyl)-1-p-toluenesulfinylcyclepropane(2)を、p-toluenensulfonic acodの触媒下benzene中加熱還流すると好収率で(Ss,4R)-4-methyl-4-phenyl-1-p-toluenesulfinyl cyclobutene(3)を得る。生成した3__〜のsulfinyl基を還元してsulfideとし、これをTicl_4を用いて加水分解すると、(R)-(-)-2-methyl-2-phenyl cyclobutanone(4)を高い不斉収率で得る。新たに生成した不斉炭素の絶対配置及び光学純度は環開裂により全体配置既知の(R)-(-)-2-methyl-2-phonylsaccinic acidに導くことにより決定された。 核立体異性体(Ss,1R)-2及び(Sa,1S)+2を立体選択的に合成し、これに0℃でphyrichine中tosyl chlorideを作用すると、それぞれ非常に高い立体特異性で1,2-転位をおこし(Ss,4R)-3及び(Ss4s)-3を生成する。(Ss,1R)-2__〜及び(Ss,1S)-2を還元して得られる(R)-及び(S)-1-(1-hydroxy-1-phenethyl)-1-p-toluenesulfenylcyclopropane(4)にtriethylamineの存在下methane-sulfonyl chrolideを作用すると、硫黄原子の関与により立体配置をほぼ100%の立体特異性で保持して(R)-及び(S)-1-p-toluenesulfenyl-4-methyl-4-phenylcyclobutene(5)を生成する。 このように、最初の一つの硫黄原子上のキラリティを用いて、反応の順番及び反応の条件を選ぶことにより光学活性のcyclobutaine誘導体を意のままに得ることができることがわかった。本法は不斉4級炭素の構築法にもなり、またキラル五、六員環の合成法にもなる。
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