研究課題/領域番号 |
62570955
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
野村 太郎 東邦大学, 薬学部, 教授 (90057505)
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研究分担者 |
津布楽 弘美 東邦大学, 薬学部, 助手 (80180040)
羽野 芳生 東邦大学, 薬学部, 助手 (00156382)
深井 俊夫 東邦大学, 薬学部, 助教授 (10057755)
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キーワード | 生合成 / クワカルス / Diels-Alder型付加化合物 / カルコモラシン / クワノンJ / シンナモイルポリケチド / 2-アリルベンゾフラン / カルコン |
研究概要 |
クワ桑樹の葉より誘導した色素生産性の高いカルスに各種^<13>C標識酢酸([2-^<13>C]CH_3COONa、[1-^<13>C]CH_3COONa、および[1,2-^<13>C_2]CH_3COONa)を投与したものについて、クワカルスの主たるDiels-Alder型付加体chalcomoracinおよびkuwanonJを各々分離し、^<13>C-NMRスペクトルを測定した。その結果、chalcomoracinにおいて^<13>C標識酢酸の良好な取込が認められたと同時に、chalcomoracinの母格である2-arylbenzofuran骨格はシンナモイルポリケチドのC-3〜C-8閉環(アルドール型閉環)後に脱炭酸して生成することを確認した。またカルコン部分についてはシンナモイルポリケチドのC-4〜C-9閉環(クライゼン型閉環)により生成し、レトロ型のカルコンではないことも確認した。また、プレニルカルコンとデヒドロプレニルカルコンとのDiels-Alder型付加体と考えられるkuwanonJについては、上記^<13>C標識酢酸の取込位置からシンナモイルポリケチドのクライゼン型閉環によって生合成される2つの同一のカルコン誘導体より構成されていることを明らかにした。一方、プレニル部分の生合成を確認する目的で^<13>C標識メバロノラクトンの投与実験を行ったが、その取込は全く認められなかった。しかし^<13>C標識されたchalcomoracinの^<13>C-NMRを詳細に検討したところ、プレニル部分に若干の取込が認められた。[2-^<13>C]および[1,2-^<13>C_2]酢酸投与では取込が認められたのに対し[1-^<13>C]酢酸投与の場合には取込が認められなかった。プレニル基が3分子のアセチルCoAより生合成されることを考えれば、これ等の結果は、投与した酢酸がTCA回路を経由していることを意味しており、イソプレンの基本的な生合成を考える上で興味ある知見を得た。従って以上の結果より、クワカルスにおけるDiels-Alder型付加化合物はプレニル部分とカルコン骨格のα、β位とが付加しており、明らかにデヒドロプレニルフェノールとカルコン誘導体とのDiels-Alder型の反応を経て生成することを示唆する結果を得た。
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