研究概要 |
1.クワ実生およびクワ葉より誘導したカルスについてDiels-Alder型付加体の生産性が高い細胞を選抜し、更に詳細な成分検索を行うことにより、クワ葉より誘導した細胞が生合成研究に適した細胞系であることを明らかにした。 2.1.の結論で得られた培養細胞を用いて各種^<13>C標識酢酸 ( [1-^<13>C] , [2-^<13>C] ,および [1,2-^<13>C_2] CH_3COONa) の投与実験を行い、クワカルスの主たるDiels-Alder型付加化合物chalcomoracinおよびkuwanon Jを分離し、各々の^<13>CNMRスペットルを測定した。その結果、両化合物をも芳香環上において^<13>C標識酢酸の良好な取込を示し、デヒドロプレニル2-アリルベンゾフランとプレニルカルコンとの付加体と考えられるchalcomoracinにおいて、その2-アリルベンゾフラン骨格はシンナモイルポリケチドのアルドール型閉環後に脱炭酸を経て生成することを確認した。またカルコン部分についてはシンナモイルポリケチドのクライゼン型閉環により生成し、レトロカルコンではないことも合せて確認した。デヒドロプレニルカルコンとプレニルカルコンとの付加体と考えられるkuwanon J については^<13>C標識酢酸の取込位置から、シンナモイルポリケチドのクライゼン型閉環によって生成する2つの同一のカルコン誘導体より構成されることを明らかにした。 3.プレニル部分の生合成を確認するために^<13>C標識メバロノラクトンの投与実験を行ったが取込全く認められなかった。しかし^<13>C標識酢酸で標識されたchalcomoracinのプレニル部分の酢酸の取込様式を検討したところ、明らかに酢酸3分子より生成するメバロン酸経由であることが認められたが、その酢酸はTCA回路を経由するという結論を得た。 4.2、3の実験結果からクワカルスにおけるDiels-Alder型付加化合物はプレニル部分とカルコンα,β二重結合位が付加しており、生合成的にDiels-Alder型の付加をしていることを示唆した。
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