研究概要 |
本研究は, 細菌開発されたポーラスグラファイトを電極とする検出システムの卓越した特性を活かし, 優れたelectrophareのラベル化により従来測定が困難であった体液中超微量成分の高感度, 高選択的分析法を確立すると共に臨床診断, 病態解析に信頼度の高い方法論を提供することを目的として行なわれた. まずredox性に優れるフェロセンおよびその誘導体を電気化学活性基, マレイミドをreacting groupとして3種類のチオール化合物用プレラベル化剤を合成した. ついで, それらの反応性, 電気化学的性質をN-acetyl-L-cysteineをモデル化合物として検討したところ, N-(ferrocenyl)maleimideが最も優れていることが明らかとなった. すなわち, 本試薬は氷冷下10分で定量的かつ安定な付加体を与えるうえ, 高い電気化学的応答性(検出限界0.06pmol)と他の電気化学活性物質の妨害を受けない高い選択性を示した. 本試薬を用いて, ヒト血中グルタチオン, ラット肝中グルタチオンの定量を行いEllman法と比較したところ良い相関を示し分析法の信頼性が確認された. 現在, 同様の観点から, カルボン酸用プレラベル化剤を開発し, ヒト血清中脂肪酸の分析へ応用している. さらに, アミンの分析用試薬, 光学活性薬物の分析用試薬を開発中であるが, いずれも良好な結果を得つつあり, 今後の発展が期待される. 特に, 光学分割用試薬で電気化学検出器に応答を示すものは少なく, 画期的試薬になるものと思われる.
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