研究概要 |
申請書に記載した計画に従って研究を行ない以下の成果を上げた. ヒト成長ホルモン(以下GHと略す)と, アルデヒド基を末端に有する中圧液体クロマトグラフィー用ポリマーゲルとを反応させて, GH固定化樹脂を合成した. 固定化率は, 0.5mg/g(湿潤ゲル)であった. これを25cm×4.5mmのステンレススティール製のカラムに充填し, アフィニティークロマトグラフィー用カラムとした. このカラムと高速サイズ排除クロマトグラフィー用ゲルカラムを直結し, さらに大容量の試料導入装置を組合せてクロマトグラフィーシステムを作製した. 一方, 妊娠ウサギ肝臓から, 既知の方法に従がってGH受容体を含む膜タンパク可溶化粗画分を調整し, 上記のシステムによりGH受容体の精製を試みた. 先ず可溶化粗画分を, 低流速の移動相に注入して, アフィニティーカラムに吸着させた後, 流速を上げて非吸着物質を溶出した. 次に6M尿素を注入し受容体を溶出しサイズ排除カラムによって分離した. 溶出液を280nmの紫外部吸収によってモニターすると同時にフラクションコレクターに分取し, 各フラクションのGH結合活性を, ^<125>Iで標識したGHを用いて測定した. その結果, GH受容体を含む画分を約4時間で得ることができた. 得られた受容体の分子量は, サイズ排除カラムを単独で用いて得られた溶出容量から, 約24万であると推定されたが, 純化の程度や回収率については現在研究中である. 今回開発したクロマトグラフィーシステムは, アフィニティーカラムからの溶出後, ただちにサイズ排除クロマトグラフィーによって迅速に脱塩・分離することができるので, GH受容体だけでなく一般に不安定な膜タンパク質を, その活性を維持しつつ分離精製するのに適用できると考えられる. 今後は, ゲル素材および固定化法に改良を加えてシステムの向上をはかると共に, 他の膜タンパク質の精製への適用例を増やす計画である.
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