X線光音響法による生体分析法の開発は、主に3分野から進められた。 1)2波長差X線光音響イメージング法の開発とイオン定量への応用 (1)X線走査光音響イメージングと金属イオン分布解析 高エネルギー物理学研究所放射光施設(PF)の集光X線を用いて、分解能0.5〜0.7mmで、金属モデル試料を用いイメージングに成功した。表面にマイラーの様なより生体に近い試料を貼り付けたものでは、熱拡散に遅れが生じ、位相像に顕著な違いが見え、将来3次元的な金属イオン分布解析に利用される可能性を知ることが出来た。 (2)X線光音響CT法の開発と2波長差金属原子分布解析 コンピュータートモグラフィー(CT)法による、X線光音響イメージングにも成功し、2波長差分布解析が、CT法では簡単に可能となることが解った。 2)光音響EXAFSの開発と生体分子の状態分析 EXAFSが光音響スペクトルにも見られる事を発見し、そのためX線に不透過な物質でも、また層状となった試料でも、そのままで、しかも表面下の構造も解析できることが解った。生体試料のモデルとして、クロロフィリンを選び、その粉末試料を測定する事にも成功した。今後開発を目指す超広波長域光音響分光法の基礎も確立出来た。 3)セミパルスX線光音響法による、非破壊での深さ方向分析法の開発X線をパルス状に照射し、その応答解析からも、試料の深さ方向の解析が可能となった。この手法は、深いところの非破壊分析に有用な一つの手法となりうる。これらを17の報文、2つの著書に発表した。 以上、ほぼその所定の基礎開発が進められ、世界で初めての本プロジェクトの推進が、当初の目的どうりに完了した。
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