研究概要 |
胎生期および新生児期における胆汁酸の体液中の動態と, その生理的意義を解明することにより, 各種肝胆道疾患の病態の解析を進めることを目的として以下の研究を行った. 1.胎児性胆汁酸とそれら抱合体の合成と高速液体クスマトグラフィによる分析(黒澤)----胎児性胆汁酸の定量法開発ならびに代謝研究に必要な標品としてリトコール酸, デオキシコール酸, ケノデオキシコール酸, コール酸を出発原料として1β, 6α, 6β-水酸化胆汁酸を合成し, それらのグリシン, タウリンおよび硫酸抱合体を合成した. 高速液体クロマトグラフにより, これら胆汁酸の分析条件を検討中である. 2.胎児および新生児体液中の異常胆汁酸のガスクロマトグラフ質量分析による定量(藤間, 馬原)----胎児および新生児体液(血液, 胆汁, 尿, 胎便)中には, 健常成人の場合と異なり, 未同定の異常胆汁酸が多種類存在することが予見される. 上記(1)の研究で合成された胆汁酸およびそれら抱合体を標品として, GC-MSによる構造解析を行い, 先に見出された1β-水酸化胆汁酸の他に新規3α, 6α, 7α, 12α-水酸化胆汁酸を胎便, 新生児尿より発見した. また定量法における前処理法をBond ElutC_8を用いて検討した後, セレクテドイオンモニタリング法による胎児性胆汁酸の定量法を確立し, 生体試料の分析に適用しつつある. 3.胎児性胆汁酸の免疫学的測定法における特異抗体の調製(池川):(1)の研究で合成された1β-水酸化胆汁酸はウシ血清アルブミンと結合させ, これを抗原として家兎に免疫を行い, 特異的な抗体を得たが, 現在のところ十分な抗体価が得られず, さらに種々, 他の動物種についても検討中である.
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