研究概要 |
先天性肝胆道疾患の早期における診断法ならびに治療法の確立が緊急の課題となっている。本研究は、胎児性胆汁酸および胆汁酸異常成分の標品を化学合成したのち、適確な微量分析法の開発を行い、胎児ー新生児期における胆汁酸の体内動態について検討し、先天性肝胆道疾患の簡便かつ迅速なる病態解析法を確立することを目的とした。 1. 胎児性胆汁酸の合成と微量定量法の開発 新規3α,6α,7α,12αー水酸化胆汁酸および3β,12αー水酸化不飽和胆汁酸を胎便および新生児尿からGC-MSにより見出した。これらの標品を化学合成して同定確認した。前処理法としてBond Elut C18を用いる固相抽出を検討し、セレクトイオンモニタ-リング法による胎児性胆汁酸の微量定量法を確立した。抱合型胆汁酸のHPLCによる分析法は、3α-hydroxysteroid dehydrogenaseと化学発光検出法により高感度化を達成した。 2. 胎児ー新生児期における胆汁酸の体内動態 胎便には、多量の1βーまたは6αー水酸化胆汁酸が存在し、羊水には1βー水酸化コ-ル酸が妊娠35ー40週に急増し、新生児尿では総胆汁酸量の50ー80%にも及ぶことを認めた。これらの胆汁酸は新生児の発育と共に、出生後1ケ月以内に減少して、成人の胆汁酸組成に近づくことが判明した。 3. 胆汁酸の免疫学的測定法の開発 各種胎児性胆汁酸ハプテンの蛋白結合体を調製し、これを免疫抗原として家兎より特異性の高い抗体を作成、^<125>I標識抗原を用いる免疫測定法を検討した。 4. 肝胆道疾患における胎児性胆汁酸の体内動態 先天性胆道閉鎖症、肝内胆道低形成小児および成人肝胆道疾患患者の体液中における胎児性胆汁酸の動態を検討したところ、1βーまたは6αー水酸化により胆汁酸の水溶性を増大して尿への排泄を促進し、胎生期の重要な生理機能として作動しているものと推論した。
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