肝細胞の初代培養系においては、チトクロムP-450量の急激な減少が見られるが、フェノバルビタール前処理ラットから得られた肝細胞を用いて単層形成させる際にメチラポン(2-methyl+1、2-di-3-pyidyl-1-propanone)を添加すると、P-450量をin vivoのレベルに維持することができ、この実験〓は活性代謝物による毒性機構解析の一手段になり得ると考えた。 この系を用いて四塩化炭素による脂肪肝生成機構について解析を加えた。この系においては、肝細胞中のトリアシルグリセロール(TG)の代謝回転のパターンは前駆体の濃度によっては影響されず、ただ量的変化のみが認められた。^3Hグリセロールでラベルした細胞内TGの代謝回転に及ぼす培地中の四塩化炭素の効果を経時的に測定すると、TGの放射活性は^3H-グリセロールの除去後、対照群では急激に減少するのに対し、四塩化炭素添加群では、一旦TGの放射活性が上昇し、四塩化炭素添加1時間で取りこみがピークとなり、その後徐々に減少するというパターンを示した。また酸性TGリパーゼの活性は培地交換後、対照群ではやや上昇するのに対し、四塩化炭素添加群では著しく阻害され、両者の間に有意の差が認められた。このことは対照群では細胞内TGがリパーゼにより分解されて減少するのに対し、四塩化炭素添加群ではリパーゼ活性が阻害され、TGの分解が低下している可能性を示している。 以上の結果は四塩化炭素によるTG蓄積の原因として、従来いわれているTGのVLDLとしての血流への分泌抑制の他に、細胞内TGの分解抑制すなわち酸性リパーゼの活性変化も関与している可能性を示している。
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