研究概要 |
昨年度(昭和62年度)に引続いて、カラゲニン空気嚢炎症ラットの血清又は滲出液から急性期反応性プロテアーゼインヒビターを精製した。精製したα2 acute-phase macroglobulin(α2APM),α1 proteinase inhibitor(α1PI)およびcysteine-proteinase inhibitors(CPI_s)を用いて、下記の点について検討した。 (1)血管透過性に対する影響:α2APM、α1PI、CPI-1およびCPI-2は、血管透過性亢進因子としてセロトニンを用いたラットの皮内反応において抑制を示さなかった。この結果から,上記インヒビターは血管透過性に影響を与えないと考えられる。 (2)線維芽細胞の機能に対するCPI_sの影響:α2APM、α1PIおよびCPI_sのなかで、CPI_sだけが炎症の慢性期において比較的高い血中レベル、滲出液レベルを維持している。そこでCPI_sの慢性期炎症反応に対する影響を検討する目的で、線維芽細胞によるゼラチナーゼ産生および好中球遊走因子の産生に対する影響を検討した。線維芽細胞はカラゲニン肉芽組織から分離し、2度継代した細胞を使用した。その結果、CPI-1およびCPI-2は、線維芽細胞によるゼラチナーゼ産生および好中球遊走因子の産生を経日的に促進した。このCPI_sの作用には用量依存生が認められた。また、線維芽細胞が産生するゼラチチーゼは主に64・KDaゼラチナーゼであるが、CPI-1存在下では54・KDaゼラチナーゼも生成した。この新しい54・KDaゼラチナーゼ分子種の生成については現在さらに検討中である。これらの結果から、CPI_sが肉芽組織の線維芽細胞を活性化すると考えられる。
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