本研究では、種々の急性期反応物質のなかでも特にプロテアーゼインヒビターをとりあげ、その精製と抗炎症作用について検討し下記の成果を得た。 1.ラットのカラゲニン空気嚢炎症モデルから血清および滲出液を採集し、急性期反応物質であるα2 acute-phase macroglobulin(α2APM)、α1 proteinase inhibitor(α1PI)およびcysteine-proteinase inhibitors(CPI-1およびCPI-2)を大量に精製することに成功した。 2.ラットの多形核白血球(PMNs)の化学遊走に対する影響を検討した。その結果、α2APMおよびα1PIはPMNsの化学遊走を有意に抑制したが、CPIsは抑制しなかった。この結果は、α2APMおよびα1PIが炎症の急性期における内因性のPMNs浸潤抑制因子であることを示唆すると考えられる。 3.血管透過性亢進に対する影響を検討した結果、α2APM、α1PIおよびCPIsはセロトニンによって亢進する血管透過性を抑制しなかった。この結果からインヒビターは血管透過性に影響を与えないと考えられる。 4.線維芽細胞の機能に対するCPIsの影響:インヒビターのうちCPIsだけが慢性期においても高い血中レベル、滲出液レベルを維持していた。そこでCPIsが肉芽組織の線維芽細胞の機能に影響を与えるか否かについて、肉芽組織から分離した線維芽細胞の培養系を用いて検討した。その結果、CPIsは滲出液中の濃度(05.mg/ml〜2.0mg/ml)において、(1)線維芽細胞のゼラチナーゼ産生を促進した;(2)線維芽細胞によるPMN因子(PMN遊走因子)の産生を促進した。これらの結果は、CPI-1およびCPI-2が線維芽細胞の機能を亢進することを示唆すると考えられる。
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