研究概要 |
1.アルツハイマー病の病態モデル動物の作成と行動変化の研究 (1)成熟家兎の脳内へ塩化アルミニウムあるいはvincristineを微量注入したところ, 急性毒性が強く, 長期生存する例が少なかったため, 神経化学的あるいは行動薬理学的研究ができなかった. (2)成熟ラットの線条体内へvincristineを微量注入したところ, ドーパミン神経系の除神経時と同様の行動変化, つまりドーパミン作動薬の投与により著明な興奮作用がおこることを認めた. 2.正常ラット線条体の局所透析によるアセチルコリン遊離と行動の同時測定:ラット線条体からのアセチルコリン遊離量をin vivoで測定するため, 微小透析チューブを正常ラット線条体内へ水平に植えこみ, 自由行動観察しながら灌流を行なった. 灌流条件:Ringer液(PH6.0)中に1uMのネオスチグミンを含有, 2ml/分で送液し, 15分毎に回収した. アセチルコリンの測定条件:移動相として0.05Mリン酸緩衝液(PH8.0)を1ml/分で送液した. 分離カラムおよび固定化酵素カラム(いづれもエイコム)を使用. 電気化学検出器の印加電圧は450mV. アセチルコリンの検出限界は1pmoleであった. 抗コリン作動薬の影響を検討した結果は次の通りであった. (1)硫酸アトロピン2.5〜5.0mg/kg, i.p.および臭化水素酸スコポラミン5〜10mg/kg, i, pによりアセチルコリンの遊離は投与後3時間以上にわたって増加した. 運動量も増加した. (2)メチルアトロピン2.5〜5.0mg/kg, i.p.およびメチルスコポラミン5〜10mg/kg, i.p.投与でもアセチルコリンの遊離量は著明に増加したが, 運動量は増加しなかった. このような結果から, 抗コリン作動薬は線条体からのアセチルコリン遊離量を増加させることが明らかとなった. ひき続き, アルツハイマー病態ラットについて神経伝達物質動態と行動の関連性を研究する予定である.
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