1.アルツハイマー病態モデル動物の作成と行動変化 (1)成熟家兎の脳内へ塩化アルミニウムあるいはビンクリスチンを微量注入したところ、急性毒性が強く、長期生存する例が少なく、実験は中止した。 (2)成熟ラットの片側線条体内へビンクリスチンを微量注入したところ、2〜3日後にapomorphineの投与により旋回行動を起すことが認められた。 (3)両側線条体内へビンクリスチンを注入したラットでは、モリスの水迷路による学習行動、すなわち記憶の獲得と保持共に著しく阻害された。これらのラットは2週ないし4週間後には運動障害のために死亡したことから、症状は進行性と考えられた。 2.病態モデルラット線条体内の神経伝達物質の動態 (1)カテコールアミン類の測定:ビンクリスチンを両側線条体内へ注入後、7〜8日目に断頭して線条体内のカテコールアミン含量を測定した結果、ドーパミンおよびその代謝産物量は軽度に低下していた。 (2)ドーパミン受容体の測定:ラット線条体膜標本と〔^3H〕ーspiperoneの結合を測定したところ、ビンクリスチン注入7〜8日後にはDー2受容体数の減少が認められた。 (3)脳内透析によるアセチルコリンの遊離測定:ラットの脳内透析により、無麻酔自由行動下に線条体から遊離されるアセチルコリン量を測定する方法を確立した。現在、ビンクリスチン処置ラットにおける測定を続けている。 3.胎仔脳神経細胞の移植:ビンクリスチン処置したラットの線条体内に、胎仔の中脳黒質付近の神経細胞を移植する試みを行っているが、まだ損傷機能を補償する明確な結果は得られていない。2(3)および3.は今後も続けて検討する予定である。
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