2つのホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK1、PGK2)遺伝子の精子形成過程での発現切り換わり機構の解明を目的として研究を行い、以下に述べる知見を得た。 1.PGK1、PGK2遺伝子の構造解析 両刷伝子を含むマウスゲノムDNAクローンをそれぞれ単離し、制限酵素地図の作製および部分塩基配列の決定を行った。PGK2遺伝子はすでに報積されたようにイントロンを含まない遺伝子であった。PGK1遺伝子は複数のエクソンから成っていた。PGK2遺伝子の転写開始点は近接した7つの部位に存在し、その上流域にはTATAボックス構造は認められず複数のCAATボックスおよびGCボックスが存在する。PGK1遺伝子のプロモーター構造については現在解析中である。 2.精子形成過程での2つのPGK遺伝子転写の切り換わり時期の決定 マウス精巣切片を用いたin situハイブリダイゼーションにより、2つのPGKmRNAが分化過程のどの時期の細胞に存在するかを解析した。PGK1mRNAは非生殖細胞およびspermatogonia、spermatocytesに検出されたが、ハプロイドとなったspermatidsでは消失していた。PGK2mRNAは減数分裂開始後のspermatocytesにはじめて出現し、spermatidsの後半で検出されなくなった。従って、PGK刷伝子転写のPGK1からPGK2への切り換わりは減数分裂開始後の4nとなったspermatocytesで起こると考えられる。また、転写と合わせて翻訳段階での制御もPGK遺伝子発現の切り換わりに重要であると予想される。 今後両PGK遺伝子プロモーターの機能解析を行い、精子形成過程での転写切り換わり機構に関する遺伝子側の要素およびトランスに働く因子を同定したいと考える。
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