本年度は昨年度に一応結果の得られた、H1ヒストン小成分、H1°ヒストンの細胞周期、組織間、成熟過程での蛋白質段階での変化の実験的なまとめを行った他、ラットのH1ヒストン遺伝子のクローニングを行なった。即ち、H1ヒストン小成分の発現が細胞周期の進行あるいは組織の成熟の過程で変化するのが蛋白質のレベルで認められたが、これが遺伝子の発現、mRNAのレベルでどのように制御されているのかを調べる為に、ラットH1ヒストン遺伝子のクローニングを行った。これまでヒストンの遺伝子にはイントロンが存在しないこと、またヒストンのmRNAにはpolyAがないことが知られている。そこでここではcDNAではなく、直接ゲノムDNAをクローニングすることにした。方法はラット肝のゲノミックDNAライブラリー(Sau3A部分分解、ベクターEMBL3、九州大学遺伝子実験施設から供与された)をヒトH1ヒストン遺伝子をプローブにスクリーニングした。その結果最終的に得られたクローンは全長13.6Kbpであった。このDNAをSacI/SelIで消化することにより、ヒトH1ヒストン遺伝子とハイブリダイズするフラッグメント2.3Kbpが得られた。このフラッグメントをpUC19にサブクローニングし、このクローンの塩基配列の一部をダイデオキシ法によりシークエンシーグした。が、H1ヒストン遺伝子をコードする部分の配列決定までは到らなかった。このフラッグメントをさらにシークエンスすることにより、得られた遺伝子が小成分の何か明らかになると考えられ、この遺伝子の発現と、蛋白質レベルでの発現の比較検討が可能になると考えられる。
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